タイルのものがたり

長期休暇を利用して、広島に行ってきました。
今回の旅の目的は、恋いこがれているのに
未だ訪れた事の無い教会への訪問でした。

(世界平和記念聖堂 設計/村野藤吾)

雪の降る冬の日、寒くてたまらないのに、
その場から離れられない魅力。
しんと静まり返る聖堂で静かな時間を過ごしました。

路面電車を降りて、聖堂が見えてくると、
数年の想いに自然とその足は小走りになります。

「そうか、このタイルのことだったんだ」
モルタルで固めたような、砂の粒が見えるレンガタイル。
素材感はつよいが、品のあるグレーの外観。

暮れもおしせまる訪問だったため、管理の方も冬休みで
敷地内と管理事務所の前をぐるりと一周。
誰もいません。
はいっていいのかな。
ここまで来て はいらずに帰れない。

錆び付いた「どなたでも気軽にどうぞ」の看板を確認し、
忍び足で聖堂の中へ。
建築探訪の旅に、この緊張感はつきものです。
閉館前の午後4時。
ステンドグラスからの光だけが暖かく感じます。


ドアハンドル、ステンドグラス、鉄格子・・・
興奮気味にデティールの写真を撮り、
気がすむと、ベンチに座ります。

教会のような祈りの空間は、訪れた人が祈るたびに建築が力を吸収し、
神聖さを増大させていく気がします。


世界で最初に被爆した広島の地に
平和のシンボルとして献堂されたカトリック教会。
この教会に行ってみたいと思ったきっかけは
大好きな建築家 村野藤吾の設計だったから、という理由でした。

でも、それ以上に引きつけられたのは、
「鉄筋コンクリートの建物に、被爆地広島の川砂を使った
灰色のレンガを外観部に化粧積みしている。」
という、紹介文です。

聖堂建立の発案者ラッサール神父の祈り。
設計時に村野藤吾が表現したかったものが
このレンガタイルにある気がして興味を持ちました。

このタイルはこの場所にあるべき、ここでしか意味の無い、
広島だから意味のあるタイル。
しかるべき場所にあるものなんだな、と
興奮気味に資料を見ていたのを覚えています。

あとで知った事ですが、このタイルは資金不足により
現場で焼いて作られたとの事。
漂う手作りの風合いは、これによるのかもしれません。

設計者としてというより
建築好きブログになってしまいました。

【世界平和記念聖堂(カトリック幟町教会)  設計 村野藤吾】
1954年竣工。世界で最初に被爆した広島の地に、平和のシンボルとして献堂されたカトリック教会。
広島で被爆したドイツ人フーゴ・ラッサール司教が建立を発案。当初はコンペ方式により設計者を決定する予定だったが、1等不在により、審査員であった村野藤吾の設計により建設された。設計者選定の波乱により、村野は設計料を受け取らなかった。鉄筋コンクリートの建物に、被爆地広島の川砂を使った灰色のレンガを外観部に化粧積みしている。戦後、建築として初めて国の指定重要文化財に、広島平和記念資料館とともに選定された。

設計担当:松尾

2014 3/31 9:00 Posted by CRAFT,素材・材料